【短編】あたしとふたご
あたしとふたご
7年前――……。
「同じ階に引っ越してきた浦田と申します。どうぞよろしくお願いします」
ある日。
あたしの家族が住んでいたマンションの部屋に、綺麗な女の人が現れた。
「あら。わざわざご丁寧にー。清水です」
お母さんが笑顔で挨拶している様子をあたしは、リビングの影からそれを見ていた。
新しく……同じ階の部屋に引っ越してきたらしい。
するとお母さんは目を輝かせた。
「あらぁ可愛い双子ちゃん……莉子」
お母さんは振り返ってあたしに手招きをした。
それを見てあたしはゆっくりと玄関に足を進める。
少し前で足を止めると、お母さんはそんなあたしの背中を押して前に出した。
「ほら莉子(リコ)。同い年だって」
そう言われて前を見ると、同じ顔の双子があたしを見ていた。
するとその双子のお母さんはあたしに微笑みかけた。
「兄の聖(ヒジリ)と弟の望(ノゾム)。よろしくね」
7年前、突然現れた。
おなじかお……ふたつ。
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