【短編】あたしとふたご
「今着いたの?」
するとひぃ君は襟元をパタパタしながら顔を歪めた。
「ん。あちぃー……。やっぱ1本後だときついな……。歩いてる暇がない」
そう言ってひぃ君は大きく溜め息をついた。
その姿を黙って見ていると、ひぃ君は思い出したようにハッとしてあたしの目の前に袋を差し出してきた。
「ん?何コレ」
「これ、望に渡しといて。ジャージだから」
ようやく呼吸が落ち着いてきたひぃ君はそう言ってフッと笑った。
あたしはそれをゆっくりと受け取ってキョトンとした。
「ジャージ?」
するとひぃ君は袋を指差して言った。
「玄関のとこに忘れてたからさ」
「のん君……」
忘れ物かい。
やっぱ、のん君ちょっと抜けてるよね。
あたしは苦笑いしつつも、ひぃ君を見上げて微笑んだ。
「分かった」
するとあたしの返事に満足そうにひぃ君は微笑む。
「よろしくね」
……やっぱ、ひぃ君はお兄ちゃんだなぁ。
しっかりしてて。
弟思いで……。
「望君!」
ひぃ君を見つめながらボーっと考えていると、あたしのクラスの教室から友達の優が出て来た。
……望君?
それに反応して優を見ると、優はひぃ君を見ている。
あ、間違えてる。
あたしはそれに気付いて優に微笑みかけた。