【短編】あたしとふたご
「優……こっちは聖だよ」
聖って普段……呼ばないから、少し緊張した。
声……どもってなかったかな?
なんて考えてしまった。
すると優はギョッとした顔をした。
「え!?ごめんっ」
慌てて優が謝ると、ひぃ君はフッと笑った。
「いいよ。気にしてないから」
そう言うと、ひぃ君はあたしに手を振った。
「じゃ、オレもう行くわ」
「あ、ひぃ君!!」
あたしはお母さんの言葉を思い出してひぃ君を引き止めた。
するとひぃ君はゆっくりと振り向く。
「今日からおばさん出張だよね?お母さんがご飯何がいい?って言ってたよ」
笑顔で聞くと、ひぃ君は少し眉を下げた。
「あ、オレバイトだし、飯出るから。望だけ悪いけどよろしく」
「え!?ひぃ君!?」
慌てて引きとめようとしだけど。
名前を呼んだけど。
……今回は、振り向いてくれなかった。
立ち止まってくれなかった。
行っちゃった。
そう思うと、急に心が寂しくなった。
でもそれ以上に……。
今まで一緒だったのが当たり前で。
一緒にご飯食べるのも当たり前だったのに。
その当たり前が、ひぃ君とできない事が、あたしの心を寂しくさせた。
……ホントに遠い人みたいだよ。