【短編】あたしとふたご


「悪かったな。わざわざ」


あたしに代わってのん君を部屋に連れて行ったひぃ君は、しばらくしてあたしの待つリビングにやって来た。
キッチンの冷蔵庫から水の入ったペットボトルを取ってあたしの方に振り返る。
だからあたしは笑顔で首を横に振った。


「ううん。慣れてるから」


そう言うと、ひぃ君はフッと困ったように笑った。
しばらくひぃ君があたしの事をジッと見てくるから、あたしはフイッと視線を上に向けた。


何だろう……。
そんな見られたら、緊張しちゃうじゃん。


あたしは少しソワソワしつつ、ひぃ君の視線から逃れたくて話題を変えた。


「そういえばひぃ君、バイト始めたんだってね」


「うん」


聞いてみると、ひぃ君は笑顔になってペットボトルに視線を移したから、内心ホッとした。
あたしは顔が少し熱くなったから、赤くなってるんじゃないかって不安になって両手で頬を隠した。


……ひぃ君が見つめてくるから。


「もう慣れた?」


「とりあえずは……一通り覚えた、かな?」


「あは。さすが」


笑顔で答えてくれるひぃ君に、あたしも笑顔になった。


ひぃ君……昔から、物覚えよかったもんなぁ。


昔の事を思い出しながらあたしはソファに体育座りしてひぃ君に聞いた。


「ねぇ。明日はうちでご飯食べれるんでしょ?」


すると、ひぃ君はピクッと反応して肩を少し揺らした。
そしてあたしの方に振り返ると、一瞬止まった。


……?
何?この間は。


キョトンとしながらひぃ君を見つめていると、ひぃ君はペットボトルを冷蔵庫に入れながら答える。


「ごめん。明日もバイトなんだ」


「えーーー!!」


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