【短編】あたしとふたご
明日もバイトなの?
何でよ……。
ムッとしながらあたしはひぃ君の背中に呟いた。
「じゃぁ、いつなら大丈夫なの?」
一緒にいたいのに。
ひぃ君だけ来ないなんてつまんないじゃん。
「ていうか、オレ。莉子んち行くのやめるよ」
……。
「え……?」
声が微かに震えてたのが分かった。
まさかひぃ君の口からそんな言葉が出てくるなんて思ってなかったから。
あたしは思わずソファから立ち上がった。
「何で?そんな毎日バイトなの?」
「いや。毎日ではない」
じゃぁ何でよ!?
昔からずっと一緒だったじゃんか。
ずっと……。
俯きながらあたしは拳を握った。
すると俯いているあたしにひぃ君は言った。
「親が出張の度にごちそうになるの悪いしさ」
そう言いながらひぃ君の足音が近づいてくるのが分かった。
泣きそうになってるのを見られたくなくて、俯いたままでいると、しばらくしてひぃ君の手があたしの頭をポンポンと叩いた。
ごちそうになるのが悪い?
何でよ。
うちのお母さんだって楽しみにしてるのに。
お兄ちゃんだって一緒にゲームできるって喜んでるのに。
あたしだって一緒にいられるから嬉しいのに。
「そんな事!ないよ!!」
気付いたら、あたしはひぃ君に抱きついてた。
いつ……こんな事になったのか分からない。
でも、もう。
自分の気持ちを隠しておく事ができなかった。