【短編】あたしとふたご
「ひぃくーん」
可愛い顔して……。
手なんか大きく挙げてさ?
思いっきり“聖好き”みたいな態度とってさ。
それなのに……俺は。
「ひぃくーん。おーい」
しつこく名前を呼び続けるりっちゃんに呆れたように溜め息をつきながら聖が現れた。
「あのさ、仕事中!なんだけど。お前等絶対邪魔しにきただろ」
そう言って俺達を睨む聖を俺も睨んだ。
「うわ。態度悪ーい」
すると聖は引きつった顔で笑った。
「失礼しました。……ご注文お決まりですか?」
あぁー。
悪意こもった声。
ボーっと聖の仕事風景を見つめていると、目を輝かせているりっちゃんが俺に言った。
「何かひぃくん。もう既に慣れてますって感じだね。バイト始めてまだそんなに経ってないのに」
また聖……。
ムッとしながらハンバーグを口に含んで目を閉じた。
「聖は……何だってすぐにできるからね」
いつだってそうだった。
「字が書けるようになったのも、自転車乗れるようになったのも聖が先だったし」
立ったのも。
話すようになったのも。
全部……聖が先だって親も言ってたし。
「そうなんだ」
「俺が練習しないとできない事を全部……聖は簡単にやってのける」
何かまた聖に嫉妬してる。
「ひぃ君は器用なんだね」
「……そうだよ」