【短編】あたしとふたご
全部いいとこ聖に取られて……。
好きな女まで取られそうになってる。
「でもさ?のん君の方がうまくなる事多いんだよね」
その言葉に俺はハンバーグを刺していたフォークを持つ手を止めた。
「え?」
りっちゃんの顔を見ると、優しく微笑んだ。
「書初めで賞取ったり……短距離で1位取ったり……。跳び箱も2段差でのん君が勝ってた。それにバスケではポイントゲッターはのん君だったじゃん」
少し……胸が温かくなった。
りっちゃん、俺の事見ててくれてたんだ。
「よく……覚えてるね」
そんな昔の事……。
俺だって忘れてたのに。
○○○○○○○○
「そりゃー」
ひぃ君ものん君もずっと見てますから。
ふとひぃ君に視線を向けた瞬間。
あたしはひぃ君と仲良さそうに話している女の子が目に止まった。
「あれ?あの子どこかで……」
「ん?あれ井口さんじゃん」
あたしの呟きに答えてくれたのはのん君だった。
「え?のん君知ってるの?」
思わず席を立ち上がる。
するとハンバーグを食べながらのん君は言った。
「あの子聖と同じクラスだよ。バイトまで一緒だったんだね」
それから……。
あたしは井口さんとひぃ君が一緒にいる姿を、学校でもよく見るようになった。
何だろう……。
嫌な予感……。