【短編】あたしとふたご


全部いいとこ聖に取られて……。
好きな女まで取られそうになってる。


「でもさ?のん君の方がうまくなる事多いんだよね」


その言葉に俺はハンバーグを刺していたフォークを持つ手を止めた。


「え?」


りっちゃんの顔を見ると、優しく微笑んだ。


「書初めで賞取ったり……短距離で1位取ったり……。跳び箱も2段差でのん君が勝ってた。それにバスケではポイントゲッターはのん君だったじゃん」


少し……胸が温かくなった。
りっちゃん、俺の事見ててくれてたんだ。


「よく……覚えてるね」


そんな昔の事……。
俺だって忘れてたのに。


○○○○○○○○


「そりゃー」


ひぃ君ものん君もずっと見てますから。


ふとひぃ君に視線を向けた瞬間。
あたしはひぃ君と仲良さそうに話している女の子が目に止まった。


「あれ?あの子どこかで……」


「ん?あれ井口さんじゃん」


あたしの呟きに答えてくれたのはのん君だった。


「え?のん君知ってるの?」


思わず席を立ち上がる。
するとハンバーグを食べながらのん君は言った。


「あの子聖と同じクラスだよ。バイトまで一緒だったんだね」


それから……。
あたしは井口さんとひぃ君が一緒にいる姿を、学校でもよく見るようになった。


何だろう……。
嫌な予感……。


< 29 / 44 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop