【短編】あたしとふたご
いつもと同じ。
お母さんが出張になったのん君は、今日も一緒に夕飯を食べる事になった。
「んじゃ。荷物置いてくんね」
「うん」
そう言ってのん君が鍵穴に鍵をさした時。
「あれ?聖帰ってんのかな」
え……。
そ言いながら玄関の扉を開けた時……。
女物のローファー。
あたしは玄関にひぃ君のローファーの横に並んだ小さなローファーに胸が痛くなった。
のん君は何も言わずにリビングへと足を進めていく。
「聖ー帰ってんの?」
リビングの扉を開けると、あたしは時が止まったように感じた。
「あ、おかえりー」
そう言って微笑むひぃ君の隣には、井口さんがいた。
「こんにちはー。お邪魔してます」
可愛く微笑んだ井口さんは少し頬を赤く染めた。
それを見てグッと痛む胸。
「あれ?井口さん……何で」
キョトンとするのん君はあたしの代わりに質問してくれる。
するとフッと笑いながらひぃ君は口を開いた。
「井口に夕飯作ってもらう事になったんだ」
「へぇ……手料理」
嘘だ。
「もしかして2人……」
ドクン。
やめて……のん君聞かないで。
すると井口さんはチラッとひぃ君を見て微笑んだ。
「うん。この前あたしから告って。そういう事に……」