【短編】あたしとふたご
ドキンッ……。
胸が痛い。
嘘だ。嘘だ嘘だ……。
涙が込み上げてくるのが分かる。
必死で堪えたあたしは唇を噛み締めた。
この場から立ち去りたい。
消えてしまいたい。
そう思った瞬間。
「そっか。じゃ、俺。りっちゃんちで食べてくるから」
そう言ってのん君は俯いているあたしの腕を掴むと、スタスタと歩き出した。
「のん君っ……!?」
あたしは掴まれた腕に驚きながら名前を呼ぶと、のん君はあたしを見ずに口を開いた。
「いいから……」
いいからって……何?
のん君……。
あたし、のん君には隠せないんだね。
のん君には全てお見通しなんだね。
「つぅ~……」
のん君の優しさに涙が出た。
止められなかった。
「……ぁ、りがと」
ありがとう。
あの場から離してくれて。
あの場であたしを連れ出してくれて。
何も言わずに傍にいてくれて。
キュッとあたしはのん君の袖を掴んだ。
「ありがとー……っ」