【短編】あたしとふたご


それからあたし達はお母さんが待つキッチンへと向かった。


「莉子ちょっとこれ味見して」


そう言ってお母さんはあたしに天ぷらを差し出してきた。
それをあたしは口に含む。


「うん。おいしー」


少しでも……笑っていなきゃ。
バレないように笑っていなきゃ。




「ごちそうさまでしたー」


夕飯を食べ終えて、のん君はリビングを出て行こうとした。


あ……。


あたしは咄嗟に席を立ってのん君の後を追っていた。
するとそれに気付いたのん君は振り返った。


「りっちゃん。見送りいいよ。寒いから中に入りな?」


「うん……」


のん君は優しい。
優しすぎるくらいに……。


「のん君……」


「ん」


名前を呼ぶと、のん君はすぐに振り返ってくれる。


どうしよ……。
呼んだはいいけど、何て言ったらいいのか。
言葉が見つからない。


「ううん。何でもない」


そう言ってあたしは静かに首を横に振った。
するとのん君は寂しそうな顔をした。
クルリと振り返っ自分の家に帰っていくのん君。


のん君……。
今日連れ出してくれて、ありがとね。


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