【短編】あたしとふたご
放課後。
あたしは自分の赤い傘にのん君を入れてゆっくりと帰り道を歩いた。
「今日2回も聖に間違われたー」
そう言って不機嫌そうにのん君は眉を下げた。
そんなのん君を見てあたしはクスクス笑いながら言った。
「多いねー」
するとのん君は困った顔をしながら上を見上げて独り言のように呟いた。
「やっぱ違う高校にしとけばよかったなぁ」
そういえば、ひぃ君はここ第一希望だった。
のん君はあんま教えてくれなかったから分かんなかったけど。
あたしはひぃ君がここだって言ってたからここにしたんだけど。
「違うとこ考えてたの?じゃぁ、何でのん君は同じ高校選んだの?」
そう聞いてみると、のん君はあたしを見てフッと笑った。
「……さぁね」
あたしも……子供の頃は2人の事間違えてたなぁ。
よく“俺が望であっちが聖”“オレが聖であっちが望”って2人に怒られたっけ。
なんて昔の事を思い出していると、傘をグイッと押された。
それに気付いてのん君を見上げると、のん君は眉を下げた。
「のん君?」
「りっちゃん肩濡れてる。ちゃんと自分にもさしな」
そう言ってあたしがのん君の方に傘を傾けていた事を怒った。
のん君はいつもそう。
ちょっとしたところに気付いて、心配してくれる。
優しい人なんだ。
あたしは笑いながら頷いた。
「うん。分かってる」
そう言ってあたしはまた傘を傾けた。
あたし達は、7年前……小3の時に浦田母子が同じマンションに引っ越してきた以来の付き合いで。
いわゆる幼馴染ってやつです。