【短編】あたしとふたご
俺はりっちゃんの笑顔が好きなんだ。
だから……りっちゃんが困る事。
悲しむ事。
苦しむ事。
したくないんだ。
ましては、俺の気持ち知って。
困らせる事……したくないんだ。
って、こんなのただ怖くて逃げてるだけなのかもね。
ただ。
りっちゃんに笑っててほしいって理由つけて、言い訳してるだけなのかもね。
自分の情けなさに少しシュンとしていると、俺はある事に気付いた。
……りっちゃんの肩が濡れてる。
りっちゃんはいつもこうやって2人で傘に入ると、人の方に傾ける癖がある。
そのせいで自分は濡れちゃうのに。
俺はフッと笑って傘をグイッとりっちゃんの方に押した。
それに気付いてりっちゃんは俺を見上げてキョトンとした。
だから俺は眉を下げた。
「のん君?」
「りっちゃん肩濡れてる。ちゃんと自分にもさしな」
そう言って眉間に皺を寄せると、りっちゃんは笑いながら頷いた。
「うん。分かってる」
って。傘をまた傾けた。
……全然分かってない。
風邪引いちゃったらどうするんだよ。
そう思って溜め息をついた。
でも、そうやって優しいりっちゃんが好き。
さりげなく気遣ってくれるりっちゃんが大好きなんだ。
でもそれを未だに伝えられない俺……。
伝えられない分。
ずっとこうして歩いてたいな。なんて思ってしまった。
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