【短編】あたしとふたご
次の日。
マンションから出たあたしは、真っ青な空を見上げた。
「ん~♪今日は雨降りそうにないね」
心地よい暖かな風がふわっと髪を撫でて、あたしはぐーんと伸びをした。
「……くっしゅ」
「ん?」
後ろから小さなくしゃみが聞こえて振り返ると、鼻を手で押さえているのん君が立っていた。
「おはよー。風邪引いたの?」
「おはよ。……んや違うと思う」
鼻を擦りながらあたしを見てそう答えるのん君。
昨日、ちゃんと傘に入れてなかったのかな。
悪い事しちゃったなぁ。
「ちゃんと昨日ふかなかったんじゃない?」
あたしは心配になってのん君に近づいておでこに手を添えた。
「ん……熱はなさそうだね」
自分のおでことのん君のおでこを同時に抑えて熱を測るけど、熱はなさそうだった。
するとのん君は静かに頷いた。
「うん。大丈夫。それよりりっちゃんは大丈夫だった?」
心配そうにあたしの顔を覗き込んでくるのん君。
あたしはふとのん君の背後に視線を向けた。
「あたしは全然大丈夫だけど……」
あれ?
ひぃ君……いない。
「聖ならまだ来ないよ」
キョロキョロとしていると、それに気付いたらしくのん君はフッと笑って言った。
「え?」
聞き返すと、のん君は歩き出してそれから口を開いた。
「眠いから1本遅い電車で来るって」
「えー。ひぃ君が珍しいね。のん君なら分かるけど……」