【短編】あたしとふたご
「のん君……襟変だよ?」
あたしはのん君の首元を指差した。
Yシャツの襟の上にネクタイが出てきてしまっている。
「っえ」
「違っ、そっちじゃないくて」
慌てて直そうとするのん君が手を伸ばしたのは、反対側。
だからあたしはフッと笑って手を伸ばした。
「……こっち」
ネクタイを直すとあたしはのん君を見上げて微笑んだ。
するとあたしをジッと見つめると、のん君は笑いを堪え始めた。
「何?」
直してもらって何笑ってんのさ。
あたしは少しムッとしながら聞くと、笑いを堪えているのん君は肩を震わせながら言った。
「りっちゃん……お母さんみたい」
って……。
「はぁ!?」
学校に着いたあたしは、ムスッとしていた。
1時間目の英語のためにロッカーから英和辞書を取り出す。
16歳の乙女に。
「お母さんってどうよ?」
独り言をブツブツ言いながら、あたしは少し乱暴にロッカーを閉めた。
てか、あんなネクタイしてたら誰だってああするでしょ?
普通の事じゃない。
みんなお母さんになっちゃうじゃんか。
「莉子!」
廊下からあたしの名前を呼ぶ声に振り返る。
すると少し離れたあたりを息を切らしているひぃ君が立っていた。
……ハァハァ言ってる。
髪とか制服とか乱れてるし、走ってきたのかな。
ひぃ君の容姿を見て考えながらあたしはひぃ君に聞く。