【短編 幸福論】
放課後、徹也は担任の小松崎と教室にいた。

向かい合わせに並べられた机に座り、進路について話しをしていた。

徹也は時折、窓の外に視線をやり、早く帰りたいという無言のメッセージを小松崎に送った。

小松崎は複数の高校のパンフレットを広げ、徹也に一つずつ説明していった。

「先生、進路はまだ決めてません。もう少し時間が必要です。」

「もう10月だぞ。そろそろ受験する高校を決めないと手遅れになるぞ。」

「まだ進学するかも決めてません。」

「いまどき中卒で働く奴なんて珍しいぞ。高校くらい卒業しときなさい。」

「高校にいく意味はあるんですか?」

「意味?」
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