【短編 幸福論】
そう。それはまるで意識をせずに呼吸をする動作。

もしくは、意識をせずに瞬きをする様。

そんな感じの、ごくありふれた日常のありふれた挨拶だった。

ありふれた挨拶を済ませ、洗面所に向かい、いつものように蛇口をひねり、
また、いつものように顔を洗った。

朦朧としていた意識が一瞬のうちに覚醒する。

オフになっていた意識の電源がオンになる瞬間。

冷たい水に奪われた顔の熱。それを包み込むタオルに僅かながらの安心を感じていた。
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