君だけを
男が去ってからも僕たちは抱き合ったまま。
僕はその格好のまま話を切り出した。
「佳奈、ごめんね」
佳奈はまだ黙っている。僕は続けた。
「昨日、あんな言い方してほんとごめん。俺馬鹿だから佳奈が何を思ってそう言う風に訊いてくるのかわからなかったんだ。
でもさっき気づいたんだ。佳奈も俺と同じ気持ちなのかなって?」
そう言うと、佳奈が顔を上げて僕の方をみた。
「同じ…気持ち?」
「うん、俺さぁ、昨日佳奈に訊いただろ?『なにか俺に話すことない?』って」
「うん」
「俺、佳奈が告白されてるの知らなかったんだ。だから昨日佳奈の口から聞きたかった。なのに『なにもない』って言われて。ショックだった」
佳奈がまた顔を俯かせた。
「ごめんね」
「いや、いいんだ、俺も同じこと言ったから。ごめんな」