Anniversary.
………。


人が多い理由は分かった。 よーく分かったけど。


「まお……、こんなに人が多いけど、エレベーター。 …… 乗るか?」


「えーっ、乗りたくない……」


だって、だって!
人が列を作るくらい並んでいるんだよ。

エレベーターは全部で三機あるけど。


「エスカレーターにするか」


「うん」



ムリムリッッ。 だって人が多くて、呼吸困難になりそうだもん。

あたしには、絶対無理。



「よしっ、行くぞ」


手首を掴んで、いっくんは歩きだす。


一応、あたしの歩幅には合わせてゆっくり歩いてくれる。


上手に人混みを別けて、エスカレーターの前までやってきた。



「ほら、先に乗れ」


あっ…… 手が離れた。

繋いでいたわけじゃないけど…… やっぱりなんだか、寂しいな。


右手がガラガラして……。


「いっくん、手」


「はっ、手?」





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