Anniversary.
黄色のカーディガンを手に持って、レジへ向かう。

お金を払って、袋に入った“カーディガン”を持とうとした、ら……。


「あっ!!」


「行くぞ」


いっくんに持って行かれてしまった。


隣でずっと立っていて、おかしいと思ったけど。

まさか、あたしの荷物を持つためにいたとは……。



「いっくん、荷物っっ!」


「持ってやるから」


それくらいあたしだって持てるよ!


「まおは“こっち”」


はあ!? こっちって……。


それは、いっくんの手じゃん。


「ん、はぐれないように」


さっきは、いっくんから握ってくれたけど……。 今度はあたしから握るの?


ちょっと前を歩くいっくんの左手が、出ている。


あたしから握るのは…… 今まで一度も無い。


いつもいっくんから握っていたから……。


「――― っっ」


前に出ている温かい左手を目指して、右手を近付ける。





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