Anniversary.
あと、ちょっと……、あとちょっと。

ゆっくり、右手を近付けていく。



「ほら、握っとけ」


クイクイッッと左手が動いた。


「――― ッッ」


中指の指先をキュッと握った。


「まあ…… いっか」


なっ! こっちは手を握るだけでドキドキなのに、いっくんはあたしに何を期待したの!!

指先を握るだけで勘弁してよー。


「離すなよ?」


「が、頑張る!」


こんなに人が多いから、もしかしたら離しちゃうかも。

頑張って付いて行かなきゃ。


「ほかにどこか行きたいとこは?」


「あー、そこ」


「はぁ!? なんでお前みたいなのが用事、あんだよ」


“お前みたいなの” って何よ。


そりゃ……。 このお店はあたしには“一切”関係無いお店だろうけど。


いいじゃん、寄ったって!





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