Anniversary.
「いっくん、手。 離していい?」


「だめ」


ムーッ。 どうしてさっ。

あたしだってゆっくり、店内を回ってみたい。


いっくんの“お財布”の相談には後で聞いてあげるから!



「ダメ?」


「だーめっ。 まおは大人しく俺の横に居ろ」


「いじわるー」


「今に始まったことじゃないだろ?」


男の子なのに、スパンッて決められないの?

男の子ってなんでも簡単に決めちゃうイメージがあったんだけど…… 人それぞれなんだ。


いっくんが悩むタイプって言うのは以外だったけど。



「いっくーん」


「んー? なんだー」


「まぁーだぁー?」


「まだー」


結構、悩むんだ。


真剣に、黒と白の財布を見比べて。

あたしや…… 回りの声が一切耳に入らないくらい真剣みたい。


「いっくんが持つなら“黒”だよね」


「――― !!!」





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