Anniversary.
近くて…… 遠い、いっくんに。

――― 触れてみたい。


手を伸ばせば、届くのに…… どうして、触れないの?



「――― いっくん」


「ん、なんだ」


視線は一向に広告に向いていて、あたしをその瞳に映してはくれない。


「いっくん」


「さっきから……。 って、おい!! なんで、泣きそうなんだよッッ」


泣きそうじゃないもん。

ただ、名前を読んだだけだよ?


「まお、そんな気に障ったのか?」


慌てふためくいっくん余所に、あたしはポツリとこぼす。



「なんで…… いっくんは遠いの?」


「――― はっ?」


たまに感じる。

こんなにも近いのに…… 時々、すっごい遠くに感じるの。


いつだって隣にいるのに…… 近くにいるのに。



「なんで、こんな気持ちになるの?」





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