Anniversary.
前ならこんな気持ち。 ――― 知らなかった。


「それはな、まお」


いっくんが目を三日月のように細めて、コーヒーを持ってあたしの隣に移動してきた。


「それはな、まお……。

まおが俺を少しずつ意識している証拠だ」


「そうなの?」


あたしがいっくんを意識しているの?

好き――― そう言うこと?


隣に座ったいっくんが、あたしの手からフォークを抜き取る。



「俺としては……」


ケーキにフォークを入れて、一口分、フォークに乗せた。


「口開けろ」


あーんと口を開けた。


「俺としては、まおに意識してもらえて嬉しいんだけど」


舌に感じるサクサク感。

目の前には、満足そうに笑ういっくん。


「うまいか?」


「おいしい」


「それは良かった」




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