Anniversary.
陽太くんだって疲れているんだもんね。 起こしたら悪い。


「そんな小声で話す必要はねーよ」


「陽太くん……」


「大丈夫だ。 簡単には起きたりしねーから」


そんなに深い眠りについているんだ。

やっぱり、旅行委員で疲れるんだ。


「んで、話ってなんだ?」


ボスリっとあたしの隣に腰掛けた。


座っても立っても、いっくんから見下ろされる。


こうやって“男女の違い”を見せられると、妙に――― 悔しい。



「まお?」


「あのねっ」


多分……。 今日のケーキを買おうって言い出したのは、いっくんだ。


こんなことを考えるのは大抵、いっくん。


それに…… だ。

あたしが1年前の今頃から治療を始めたって、こんなに詳しく知っているのは、いっくんだけ。


「なんか、ありがとうね」


「なにをだよ。 ったく、そんなことを言うためだけにわざわざキケンなリスクを侵してまで来たんかよっ」





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