君の名は灰かぶり
初めてみる室内に
サクヤは足を止まらせた。
その部屋は黒で統一されていて
とても殺風景なのに
サクヤは何故か安心したのだ。
サクヤが部屋の入り口に
突っ立っていると後ろから
「後がつかえてんだよ」
と男のイライラする声がした。
サクヤは慌てて「ごめんなさい」を言って室内に足を踏み入れた。
男は、少しだけ瞳を揺らしてから
「シャワー浴びてこい、血生臭い。お前」
と鬱陶しそうに言った。
サクヤはもう一度
ごめんなさいを口にする。
すると、男は
苦虫を噛んだかのように顔を歪めて
「……まるな」
と小さな声で何かをぼやいた。
「何?」
サクヤは、
よく聞こえなかったのか眉をしかめる。