君の名は灰かぶり
───…無愛想な男は、
ソファーに座って暗く影を落としていた。
そして、ため息をついてから
「サクヤ…」
と呟いた。
──…シャワーから出たサクヤは、
手慣れた手つきで
バスタオルに身をくるむ。
むあっとした熱気が浴室に広がっていく。
置いてあったバスローブに
身を包み
濡れた黒髪をバスタオルで拭いてみる。
───…この、香り
と思わずバスタオルに鼻を近付ける。
優しい…匂い、
ボク…この匂い..シッテル───…
なのに、
思い出せない──…
「──…ねぇ、教えてよ」
ソファーに腰を沈めている男に
サクヤは声を掛ける。