君の名は灰かぶり


しかし、銀髪の男の事も

紅い林檎の事もどうしても

思い出すことが出来なかった。



ただ、少女の中には

焦燥感のみが残っていた。


早く此処から

逃げなければという焦燥感が。



そのため少女は

手に持っていた刃物を落として

目の前の男を素通りして


部屋の出口を探した。


出口は、呆気なく見つかった。

探すまでもなく

少女の躰がそれを覚えていたのだ。


少女は、重たいドアを開いた。

鍵は掛かっていなかった。
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