見事に、振られました。
 コタツに体をさらに押し込めたら、足が出てしまった。

 はたから見たらとても間抜けな姿で、真っ白な天井を見上げた。

 電球に合わせて目をぐるぐる回した。

 視界の端に、お茶を運んでくる姿が映る。

 私の間抜け姿を見て、呆れたような顔をしていた。


「振られました」


 ぽつりと言ってみた。

 急須を持つ手を止めて、私を見下ろしてきた。


「見事に、振られました」

「理由は?」


 湯気が上っていた。

 この部屋、意外と気温が低いのかな。


「うんざりなんだって。毎日毎日電話とメール、何してたの?どこにいるの?誰といるの?……うざったいんだって」


 世界はゆがんでいる。


「突然だよ。何も言われたことなかった。いつもニコニコしてた。心配されて嬉しいってヤキモチ焼かれるのは愛されてる証拠だって、言ってたのに。うざったいんだって」

「……お茶」

「ありがと」


 差しだされたお茶は机に置かれた。

 飲みたいけどコタツから出たくない。

 モゾモゾ動いてみた。

 怒られた。
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