見事に、振られました。
「機嫌、すごく悪かった。いろいろあったんだろうなって、ちょっと今思った。私、全然気づかなった。自分のことばっかだった。彼のこと、何も知らなった。そりゃ、嫌われちゃうよね」


 緑色の自分が映ってた。


「玄関でそれ言われてさ、すぐに追い出されて……ドアの前で茫然とした。何が起こったのか分からなくてさ。でも、振られたんだなって、理解したらさ、すごく泣けてきて……でもなんか悔しくて、馬鹿みたい泣いてやろうって、泣き叫んでやろうって」


 緑色がすごく揺れている。ゆがんでいる。


「でも、子供みたいに泣けなかった。ぎゃーぎゃー喚けなかった」


 出るのは吐息ばかり。


「あ~あ、成人式迎えても大人って気がしなかったけど、もう子供じゃないんだね。駄々をこねて泣いてたあの頃のように、もう泣けないや。号泣してやろうって、泣き叫んでやろうって思ってたのに。声、出なかった。恥ずかしかったのか、そんな力がなかったのか、わかんないけどさ。ドアの前で、女々しく泣くほうがみじめに思えて、笑っちゃったよ」
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