見事に、振られました。
 気づいたらここに来ていた。

 分かってたから。

 嫌味を言いながらも、私の話を最後まで聞いてくれるって。

 ぐちゃぐちゃの心と脳みそでも分かってた。


「泣けばいいじゃん。女々しく泣いてればいいじゃん。女なんだから女々しくて当たり前だろ。日本語おかしいぞ」

「一言、余計だよ」


 バカヤロ。

 ばかやろ。

 なんでそこで、しょうがないなっていう風に笑うかな。

 泣いちゃうじゃん。

 本当に泣いちゃうじゃん。

 今すっごくブサイクだ、とんでもない顔してる。


「小さい頃から泣き虫だったもんなぁ、よく我慢しました。泣いていいよ、姉ちゃん」

「……ヤダ」

「何を駄々をこねてんだよ」

「弟の前では、もう泣かないもん」

「そーかよ」


 そして笑って、湯呑みを口に運ぶ。
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