キスより先はお断り!
 その帰り道、すこし疑われていたみたいだけど、悠里についてあれ以上聞かれることはなかった。

ようやく駅に到着すると、安堂くんとは乗る路線が違うから最寄駅の改札前で別れることになる。


「あのさ、美波ちゃんのケイタイのアドレス、聞いてもいい?」

 はにかみながら遠慮がちに聞いてくるあたり、安堂くんらしい。

少し構えていたところもあったから、それでほっとしたんだ。


「うん、もちろんだよ」

 人が混み合う中、赤外線でお互いの情報を交換した。

むしろ、安堂くんの連絡先を知れるなんて、塾中の……いや安堂くんの通う高校の女子をも敵にするんじゃないかと恐れ多いくらいだ。


 そんな風に思って、パタンとケイタイを閉じたときだ。


「迷惑なのはわかってるんだけど」

 そんな前置きをおいて、安堂くんは一息ついて、あたしに向き直る。


 どうしよう。
やっぱり悠里のことを聞かれてしまうんだろうか。

どうやってはぐらかそうか、それとも安堂くんにだけは話してしまおうか、そんなことが頭をぐるぐる回っていた。


 けれど───




「僕、美波ちゃんが好きなんだ」






 そう、安堂くんは、あたしがスキで───

……って、えっ!?…ちょっと、待って?


「あ、安堂くん……?」

 今、あたしのことスキって言った……?

突然の告白に、頭が追いついていかない。


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