キスより先はお断り!
「なに?どういうつもり?」

「どういうって……」

 悠里は面倒そうに、はぁ、と一つため息をこぼす。


 昨日のことを言ってるのはわかる。

いつもなら悠里と二人のあの場所に、昨日は安堂くんといた。

けれど、事情を聞いてほしいし、別にココでやましいことをしていたわけじゃないんだ。


 あたしの反論を聞く前に、呆れたように悠里は、

「わかってないならいい」

 そういって、無愛想に身を翻す。


そこで、あたしの中でナニかがカチンと弾けた。



 ───“いい”って、なにが?


見慣れてるはずの後姿に、とても腹が立つ。


「……悠里はいっつもそうだよね」

 思わずつぶやくと、ドアノブに手をかけた悠里がゆっくり振り返る。


「なにがだよ」

「そうやって、いいたいことばっかり言って。……あたしの気持ち、全然考えてくれないじゃんっ」

「あのなァ……」

 悠里は語尾を荒げた。だけど、あたしも止まらなかった。


「女の子から、宮村先生〜って声かけられればニヤニヤしちゃってさ!授業が終わってもメールひとつくれたことないし!」


 ずっと思ってた。

悠里はあたしよりもオトナだし、知らないことを知っている。そのたびに、あたしはコドモだと思い知らされて、惨めで悔しくて。


「……で?」

「そ、それに比べて安堂くんは、連絡はたくさんくれるし、帰り道は送ってくれるし……。
それに───」


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