キスより先はお断り!
 やばい、どうしよう。


「───っ!!」

「あとは俺とコイツの問題、だろ?」


 心臓が痛い。
さっき安堂くんに言われたときとは違う痛み。

血液が踊るみたく、身体中を走っていくこの感じ。


「ああ、なんなら見せてやろうか?」

 その言葉とともに、耳の裏にかかる吐息は、ゾクゾクと身震いをさせる。

「ふえ……っ!?」

 そして近づいていくその熱を帯びた距離に鼓動は高鳴る一方で、あたしは声も出せなかった。


「なぁ、美波──……」

 甘い声が首筋を優しく撫でる、そのとき。


「……分かりました!!もう、結構です!」

 腰抜かす寸前ともいえ、あたしは一気に脱力した。


 あ………。
危なかったーっ!!


 息を切れ切れにするあたしだったのに対し、楽しそうにする悠里は最初からわかっていたのか。

なんにせよ、弄ばれたみたいで釈然としない。


こんなあたしたちを見て、安堂くんは呆れていた。


「正直、宮村先生ってもっと利口な人だと思いました」

「そりゃどうも」

 ニンマリと意地悪そうに笑う悠里に、さすがの安堂くんもお手上げ状態みたい。


「とりあえず、僕は一旦引きます。でも、諦めたわけじゃないですよ」

「おー、怖」

 おどけてみせる悠里を一瞥した安堂くんは、ゆっくりとあたしの手を握ってきた。

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