キスより先はお断り!
「生徒になにかあったら困るだろ」


 ……──あっそ。

「はぁ~……っ」

 やっぱり、選ぶ相手間違えたかも。いや、今からでも間に合うかな?

なんて手を引かれながら、星が光る夜空を見上げたときだ。



「お前になにかあったら、お前の親に挨拶にいけなくなるだろ?」

 面倒くさそうに言うもんだから、ついついあたしも便乗しちゃうわけで。


「あー、ハイハイ、そうで──」


 ……………え…?


「ゆう……り……?」


 もしかして、今、とてつもなく嬉しいこと言ってくれた?


「ほら、駅までだけど送ってやるんだからさっさといくぞ」


 それは滅多にない、悠里と一緒の帰り道。

照れ隠しなのか、やけに歩調が早かったけど、それは言わないでおいてあげた。


「送ってくれるのは嬉しいけど、塾は平気なの?」

「平気じゃないよ、また戻らなきゃいけねーし」


 やっぱり面倒そうにしてるけど、心配してくれたのよね。……一応。


「なに笑ってんだよ」

「なんでもないよ」

「生意気」

「生意気でいいもん」

「減らず口だな」

「どういう意味──っ」


 言葉が続かない。

温かい吐息が口の中に広がり、それは唇を伝い、身体へと静かに震える。


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