ティアラ2
第1章
汗みずシンデレラ
目の前にいるのは、眼鏡を外した愛しい男。切れ長の二重まぶたに見つめられると、胸がグッと締めつけられる。
普段、服を着ているときはわかりにくい、肩や腕の筋肉。それを知ってるあたしは「特別」なんだろうなって、この瞬間になるといつも再確認できるんだ。
「……ねぇ、篤紀」
「ん?」
「……い」
「え?」
野獣になった彼の、掠れた声。耳にかかる息がくすぐったくて、あたしはゾクリと身を震わしながら、目を閉じた。
「……たいの」
「ん、何?」
太い首に両腕を回すと、しがみつくようなこの体勢に興奮したのか、覆いかぶさる彼は耳を傾けながらも息を荒くする。
苦しくて、もどかしくて……。あたしは彼の肌に爪を立てながら、大きな声で叫んだ。……冷や汗を流し、泣きわめくように。
「痛いって言ってるのよ!! このくそったれ!!」
付き合ってから1年半が経つというのに、あたしたちはまだひとつになっていない。