ティアラ2
鼻息を荒くして、険しい表情で睨む。数秒間、篤紀はそんなあたしを、冷静に見つめていた。

「帰るわ」

すっくと立ち上がり、地面に転がるボールと鞄に手を伸ばす彼。

「ちょっと、まだ話の途……」

ふざけんじゃないわよ! 都合が悪くなったら逃げるわけ!?

引き止めようとするあたしの言葉を、篤紀は向こうをむいたまま遮る。「話なんかできる状態じゃねぇだろ」と。


「なに興奮してんだ、バカ」

「バッ、バカってなによ!」

「そんなふうに感情的になるところがバカだ、って言ってんだ」

ベンチに座っているあたしを、見下すような目で見る。

全然、理解してくれない篤紀に腹が立った。
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