ティアラ2
「ああ、そうですか」

片腕で抱えるサッカーボールを、ひょいっと手に取る。

「そうですか、そうですか」

トンと足の前に置いた。

「じゃあ勝手にすれば?」

ボールを目で追い、きょとんとしている篤紀をじろりと睨み……。


「ピースでもハートでも好きに送ればいいわ! この……どすけべがっ!」


勢いよく蹴った。ボールは流れ星のように速く、公園の端へと飛んでいく。「あっ」とつぶやいて、慌てて取りにいく彼。


「ふんっ」

先に帰ってやる。あたしは走る彼の背中に舌打ちしながら、公園を後にした。

目に焼き付いている、笹野京香のデコメール。

「……」

カバンをブンブン振りながら歩くあたしは、ピタリと立ち止まり、足もとの地面を見つめる。

直子の言葉を思い出した。

……これもきっと、ただのヤキモチ。

「わかってるけど」

わかってても、悔しいの。

なんであの子が篤紀のそばにいるんだろう。彼のそばにいるのは、あたしだけでいいのに。

……弥生ちゃんも、笹野京香も……みんな消えちゃえ。
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