ティアラ2
シールをはがすみたいにして、あたしの手をエプロンからはなす彼女。

「あたしはその笹野さんって子と会ったこともないし、見たこともないんだから」

「なら……」

「美和、落ち着いて!」

負ける、って言葉で感情的になっていた。……直子は「いちばん」や「勝ち負け」にこだわるあたしを、呆れた目で見る。

「あたしは、あんたがこんなふうにすぐ怒るから……負けるんじゃないのって言ったの」

ペチッとおでこを叩かれた。

「美和は自分が思ってるほど強くないよ。……1年前の今頃も、アタフタしてたのはあんただけだったでしょ?」
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