ティアラ2
「降らないよ。天気予報では曇りのち晴れだったし、そのうち晴れるんじゃない?」

突然、聞き覚えのある声に囁かれた。あたしは両手でバーガーを持ったまま、外へ向けていた目をゆっくり隣へ移す。

「と、透吾っ」

「こんにちは」

いつの間にか横にいた彼。驚いて思わず名前を口にすると、にっこり微笑まれる。

「いつから……」

席に戻ったときはいなかったはず。なら、外を見ていたときに腰かけたのだろうか?

「いまさっき。カウンターで注文してるときに、店員の子と立ち話をしてる君を見かけてね」

質問に答えながら、アイスコーヒーにシロップを注ぐ。当たり前のようにあたしの隣で。

なんかイラッとした。あたしはズズッとカフェラテを飲み干し、横の椅子に置いていた鞄に手を伸ばす。

「おっと、ちょっと待ってよ。まだ一口も飲んでないんだから」

カウンターに返すつもりのトレイを、グイッと掴まれる。立ち上がっていたあたしは、しらけた視線を透吾に向けた。
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