ティアラ2
「……ハァッ」

棚の前で大きなため息。胸にあるモヤモヤを全部、払いたかった。

「どんと構えなさい、美和」

独り言をつぶやきながらの作業。カウンターに戻るまでには機嫌を直しておきたい。

あそこにはもう彼女がいるんだから、苛立ったままだと負けになる。

「そうよ、美和……あんたは篤紀の彼女じゃない。本妻なのよ、本妻」

結婚なんかしてないけれど、それくらいの気持ちでいなきゃだめだ。そう思うことにした。だから、あたしは……。


「百瀬さん、控え室に写真を置いたままだから。アッキーの写真、欲しいのがあったら言ってね」

休憩に入るとき、笹野京香にそう言われたときも、あたしは余裕がある態度で、こう返す。

「ありがとうございます。でも、ふたりの写真が家にたくさんあるから、結構です」

……言ってやった。

「ふんっ」

ざまぁみろってんだ。
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