ティアラ2
自然と尖る、口先。手の動きも少しだけ荒くなる。

「そっか。じゃあ、渡しといて」

目の前に持ってこられた紙。注文書、という文字を見つめるあたしは、それを受け取らずに作業を続ける。

「自分で渡せば?」

仲がいいんだから、あたしに頼まず自分で渡しなさいよ。いつもみたいにお喋りしながら、楽しそうに向かい合えばいいじゃない。

思い出すのは今朝、彼女の隣で写真を眺めていた篤紀の姿。

「怒っている」ってことを伝えたかった。けれど、彼は……。
「あっそ」

あっさりと腕を引いて、この場から去っていく。視界から彼の足が消え、しゃがんでいたあたしは慌てて顔を上げる。

すでに篤紀は、2階へと階段をのぼりはじめていた。

「……あ」

待って、と言いたくて口を開く。だけど、声が出ない。

「……」

離れていくのをじっと見つめることしかできなかった。

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