ティアラ2
しばらくして、笹野京香は1階に戻ってきた。お手洗いに行ってたの、と言いながら。

そして、あたしの報告を聞くと、休憩に入る前に2階へと上がっていく。その足取りは軽やかで、どっちが彼女なのかわからなくなる。

数時間後、あたしは首を回しながら、控え室へと歩いていた。
「今日も疲れた」

仕事に慣れてきたせいか、最初の頃よりは作業も増え、肩もこるようになっている。

「早く帰ろ」

できるだけ、早く。こんなところで長居なんてしたくないもの。

独り言をつぶやくあたしは、このとき、家に帰ったあとの自分を想像していた。

お母さんが作ってくれているご飯を食べ、ストレッチを済ませてからお風呂に入り、ふかふかのお布団の中で眠ることを……。

そう、控え室で起きていることなんて、これっぽっちも想像していなかった。

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