ティアラ2
「……氏じゃないの?」

ありえない、マジでムカつく。
「あんた、誰の彼氏!?」

ドンッと胸を押した。ぐらつく彼にそう言って、あたしはその場から走り出す。

パタパタパタ。通路を走る自分の足音が、耳に響く。熱くなる目頭。

「……くもんか」

こんなことで泣きたくない。

「泣くもんかっ」

バカな女、バカな従業員。

なんで、あたしが疑われなきゃなんないの?

「篤紀のバカ」

店を出ると、外はもう真っ暗で。でも、曇っているせいか星なんて見えない。

「……なんでよ」

月ですら、かくれんぼ。

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