ティアラ2
フロアへ向かう彼らが去った後、あたしは鞄の中にいれてあるヘアゴムを探しながら、控え室へと急ぐ。

ギリギリの時間まで家にいて、休もうかどうかを悩んでいたから、今日はゆっくりしている時間なんてない。

「はぁ……」

頑張ろう、と決めたはずなのにため息。

出勤しなくても今日が楽しくないことはわかっていたし、テキトーな理由をつけて休もうかとも思った。

けれど、ここでまた、あたしは篤紀のことを考えたんだ。

「紹介で入ったのに、サボったりしたら迷惑をかけてしまうな」とか、「サボったってわかったら、篤紀……怒るだろうな」なんて。

やってもいないことで疑われながらの勤務。

どんなに忙しくても、あたしはきっと、このあとの6時間をものすごく長いものに感じるのだろう。

< 168 / 527 >

この作品をシェア

pagetop