ティアラ2
あの女がしていたことを聞いても、篤紀はあたしを辞めさせようとする。

直子の声が頭の中で響く。

“そんな男のどこがいいの?”


「……あっそ」

ほんと、どこがいいんだろ。

「わかったわよ」

いいとこなんてないじゃない。

「辞めてやるわよこんな店!」

自分のロッカーからハンガーを取って、全部投げつけた。

腕で身を守った彼。あたしは着ていたエプロンを脱ぎ、地面に叩きつける。

なにを言っても無駄だとわかった。

わかったから、なにも言わないで控え室を出るあたし。

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