ティアラ2
改めて、いま着ている服を見下ろす。

……もし、この考えが当たっているのなら、汚れた服を気にしてくれたのかもしれない。

そんなことを思いながら、うんと答える。自然と声が小さくなっていた。

すると彼は「そっか」と言い、口の端をクイッとあげる。

「やなことがあったときは、ウマイもん食うのがいちばん」

窓を開けてから、彼は煙草を1本くわえた。暗がりのなかで灯る、小さな火。

やっぱり、と心のなかでつぶやいていた。

なぜか……嬉しく思う自分がいる。それがたまらなく悔しかった。

「ここから、どう行けばいいの?」

「いいよ、ここで」

数十分後、車は希望ヶ丘の交差点に到着した。

数時間前のあたしは、家を知られたくなくて、近くでおろしてもらおうと考えていたはずなのに……。

「もう遅いし、危ないから送る」

そう強く言われたあと、素直に自宅までの道を教えてしまった。

< 214 / 527 >

この作品をシェア

pagetop