ティアラ2
思いっきり強く閉めた、玄関のドア。

その音は、奥の台所にいたお母さんの耳にまで届いたのだろう。パタパタと慌ただしい足音が聞こえてくる。

「おかえり、美和ぁ」

「……ただいま」

話す気分じゃないから、さっさと上へあがりたい。

「どこ行ってたの?」

「……ちょっと」

いまの顔、お母さんに見せたくない。どうしたの、ってしつこく聞かれるのも嫌だから。

「そう」とつぶやいて、ため息をつくお母さん。

素っ気なく背を向けるあたしは、後ろを気にしながらも、階段をのぼりつづけた。

「あ、あと……篤紀くんにも連絡しときなさいよ? 1時間くらい前にうちへ見えてたから」
2階についたとき、思い出したというかのように叫ばれる。

驚いて、ピタリと立ち止まったあたし。
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