ティアラ2
短く感じる指。爪切りとヤスリを持ったまま、あたしはパーにした手を空にかざして、口を尖らせた。

「あんた、マジで働くつもり?」

「うん」

「高校時代、一度もバイトをしなかったあんたが……レンタルショップの店員?」

「うん」

「人に指示されたりするのよ?」

直子はさっきから、バイトすると言ったあたしを不安そうに眺めている。

「大丈夫だって。前から篤紀が働くのを見てたけど、あたしにでも出来そうな作業ばっかだし」

主に本の整理や荷物運び。あとは、たまに電気をかえたりする感じ。それくらいなら、あたしにだってできる。

昨日、あれから篤紀に「そんな指して、なに言ってんだ」と笑われ、仕方なくずっと伸ばしていた爪も切ったし……やるって決めたからには、何がなんでもやってやる。
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