ティアラ2
太陽の光で紅くなった水面。ゆるやかな波の音を聞きながら、潮のにおいを懐かしむ。

「あたしも海にはずっと来てなかったな」

日焼けしたくなくてずっと避けてたけれど、たまに来るのもいいな。

車に乗ったまま、ぼんやり景色を眺める。

すると透吾は突然、体をひねって後部座席からあるものを取り出した。

「……何?」

大きな茶封筒。手渡されたあたしは、首を傾げながら中を覗く。

入っていたのは、2枚の写真と分厚い書類。

「それ、ここだよ」

B4サイズの写真を見るあたしに、彼は言う。

「そのたった1枚を撮りたくて、10日以上……ここに通ったんだ」

小さな波が作る、たくさんの色。空は青いのに、なぜか水面は虹色に輝いていて。

「……きれい」

思わず、口からこぼれた。
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