ティアラ2
「決まった表情しか出さないモデル。こっちがどんなに粘っても、本人に見せる気がねぇから出ねぇんだよ」

高級な化粧品にプロのメイク。

外人さんの顔立ちも整っていて、どう見ても綺麗。なのに、透吾は……。

「駄作」

そんな言葉をつぶやくの。眉間にしわを寄せながら。

「そうかなぁ?」

あたしにはわからないや。

まじまじと眺めても、あたしの感想は変わらない。

透吾は座席を少し後ろへ傾けて、頭の後ろで腕を組んだ。

「綺麗なものを綺麗に撮ることなんて、誰でもできる。……俺が撮りたいのはそんな写真じゃない」

目を閉じて、深々とため息。

あたしは口を尖らせながら、また海の写真を見る。

本当にここで撮ったのか、と疑いたくなるくらい素敵。

< 252 / 527 >

この作品をシェア

pagetop